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元アンチが3rdテニミュドハマりして今に至ります

舞台「口紅」をみました

11月14日に千秋楽を迎えた、舞台「口紅」をみました。

舞台「口紅」 OFFICIAL WEB

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 主演は石田隼。8代目青学大石役から卒業後すぐの初主演であり、みた方から強くおすすめされた舞台だったので夜公演に行ってきました。場所は赤坂レッドシアター。

 

 あらすじはHPから

とあるスイミングクラブの日常。舞台はイストラクターたちが集うスタッフ専用の2階控室。下には小学生の生徒たちが泳ぐプールが見下ろせる。4人のインストラクター、中島保(石田隼)、春日雄介(瀬尾卓也)、下平春道(村田恒)、紅一点の江上早苗(青野楓)。スイミングクラブを経営する金子和人(酒向芳)と新しく配属されたマネージャーの阿部聖子(ふじわらみほ)。中嶋と中学の時の同級生で、現在息子をこのクラブに通わせている前田珠里(長谷川るみ)。高校教師だった春日の元教え子で女子高生の関口志保(緒方もも)。 何気ない日常を過ごしている8人の人たち。少なからず吹いていた闇の風が、ある出来事をきっかけに大きく吹き始める。「日常の中の凶器」を武器にし始めることが「死」というものを呼び寄せ始める。笑ったり、嘆いたり、なすり付けたり、踏み込まれたり・・・。 牧田明宏脚本による8人の絡み。和田憲明演出による8人の縺れ。普通に過ごしている普通の人たちが織り成す人間模様は、ご観劇いただくお客様のすぐ隣にもあることかもしれません。

 

 隼くん演じた中島の中学の同級生・前田珠里の息子かずき*1の死亡事故からだんだん雲行きが怪しくなっていく。もともとお互いに線を引きたい部分に土足でずかずか上がり込んで荒らしていくような人間関係だったのですが、ここから複雑に絡み合って死が身近になっていくことが面白かった。
 中島保は、利用者の女性からプレゼントを受け取ったあとに登場する。その後もまたプレゼントの袋を持っている。わたしからみてもだけど、きっとだれから見たって彼は好青年なんだと思う。眼鏡をかけて、人の好さそうな笑みを浮かべている。にこにこしていて、そうですねってすべてを頷いてくれるような雰囲気がある。けれどそれは上っ面だけで、実際彼は自分のわからないことにだってわかったふりで頷く。それに無神経な発言で相手を鋭い刃物で刺すように傷をつけて、でも中島自身はそれに気づいていない。しかも笑って相手が傷つくような言葉をいうから、それがこわいし、おそろしかった。あの優しそうな顔と、裏表がなさそうな笑いだから、余計にぞわっとくる。裏表がないってわかるから、ああこの人は本心を言っているだけなんだなってわかってしまう。どこにでも、こういう人はいるなってわかるけれど、それを石田隼が演じたからここまでぞわぞわ気持ち悪かったのかなあ。保って名前なのに何一つ保ってない。


 さいごに、前田が「この施設にかずきは殺されたと思うことにした」みたいなことを言い出して、中島が「君だって人を殺しているくせに」みたいな話になったんですけど。あなただって忘れていたし、その場で何もしなかったくせに前田を攻める材料にするのはおかしくないかって、ちょっと思ってしまいました。中学時代に死んだ同級生を今更思い出して、じゃあ自分は加害者じゃないって理由で加害者を攻めるのはなんだか違うような気がしてしまう。結局見ていた人だって同罪なんじゃないのかなあ。ずっとその死んだ同級生の墓参りにいっていたエレファンってあだ名の人の立場だったら違ったかもしれないけれど。なんだか最後あの中島に首をかしげたし、前田に人殺しということをいったくせにクラス会の話をするの恐ろしかった。たぶん、中島は相手を傷つけた自覚はないんだろうし、そもそも他人に興味がないというか薄いのかもしれない。

 

 たぶんだけど、この舞台を見に行ったひとのなかには「青学・大石を演じた石田隼」を知ったうえで行ったひとがいると思う。わたしもそのなかのひとりで、だからこそ「今まで作り上げられてきた石田隼というキャラクター」をいい意味でぶち壊されて、その笑顔にぞっとしたのではないかなあと思います。
 わたしは隼くんって、あかるい笑顔とすごく面白い人だなあって印象が強くて、SNSでも明るいキャラクターなんだと思わされることが多かった。歌もめちゃくちゃに上達して、かっこよくて、絵がかわいくて*2、でもイベントや何かで発信される彼の姿って、やっぱり「やさしそう」「おもしろい」という姿が多いのかなって。あとなにより、隼くんがいると安心感がとてもあります。イベントなどで隼くんがいると絶対面白いだろうなって勝手に思えるくらいに。もちろん、それは石田隼という役者のほんの一面だとわかったうえでしたが、今回の舞台をみて隼くんの他の演技や一面を今後も見てみたいと強く思いました。あの舞台をみるまで、公演までにSNSでの様子がちょっと違う気がすると思っていたのですが、みたあとにとても神経を使って追い込んでいたのかもなあなんて思いました。ほんとうにお疲れ様でした。
 本当に、いつもはこっちまで笑っちゃうくらいにハハハハハ!って隼くんは笑うのに、この舞台で同じ笑い方するとただただ怖くて、人の雰囲気や発言でこうも違うのかと振り返ります。ほんとうに、またみたい。とてもぞっとさせられました。今後もこういう役をやってほしいですし、またいろいろな面をみせてほしいです。
中島が怒鳴ったり、さいごちっとも美味しくなさそうに食事をとっている様子が忘れられないです。

 

 舞台の感想に戻るのですが、この舞台の登場人物全員がどっかでおかしくて、でもどこにでもいそうだなあって思えるような人たちでした。
 とくにこのプールの経営者の金子さんや、春日雄介と関口志保なんてめちゃくちゃいますよね。責任逃れをしたいのか、死んだかずきの母親・前田とマネージャー・阿部をふたりきりにしたままトイレにいくといって廊下に逃げ出した時なんて、思わずああもうって胃が痛くなってしまって、ああいう人いるしわかるわかるって突然現実のことを思い出してしまうほどでした。
 春日の元教え子の関口は、椅子に座ってうつむき気味だったり頭を雑にがさがさとかく様子が、なんとなくですが過去に同級生だった子と被ってみえました。
 来週に修学旅行に行くのに、まだ班が決まっていない。会話の様子から、いじめられていてひとりぼっちなのだろうなあって分かる関口。わざわざもう無縁ともいえる春日に頼ってきたのは、もう行かなくてもいいって言ってほしかったのかなあ。行かなくても別にいいと思うし、それを選択しなかった関口も関口だと思うけれど。春日がひたすら「自分から行かなくちゃ」とか「がんばれよ」と言っていて、ああこの子そのうち死ぬなって思ったらその後自殺していました。


 春日が「いつか笑い話になる」と言いながら自分の学生時代や修学旅行がいかに楽しかったかを語りだしたときに、なるわけないだろってどんどん冷めていく自分がいて、めちゃくちゃあの場から逃げ出したくなりました。たぶんそのいつか笑い話になるという言葉は、関口が歌いだす山口百恵秋桜なんだろうなあ。春日は「こんな小春日和の穏やかな日は」以降を思い出せなかったけれど、関口は知っていて歌ったのかなと思うとなんともいえないよね。
 その後秋桜のつづきを思い出して関口に電話を掛けるけれど、電話ではたぶん母親か父親が出て自殺したという言葉をきき、そこで関口の死を知る。でもどんな会話をしたかとか会っていたとか、全部嘘をついてごまかして電話を切る春日は、どこかで責任を感じていたのかもしれない。けれど春日の言葉だって引き金のひとつでもあるし、そのまま罪悪感でも感じるのかなあって思ったらやりきれねえ~~~って顔だけだったしたぶんそのうち忘れるんだろうなあと思います。
 関口の死を電話で知ったとき、秋桜が流れ出してドアにさっきとは違ってきれいにお化粧をした関口が笑っていて、そのときにずっと春日は狂ったように笑っていて。突然暗転したと思ったら、関口のいた場所に中島が立っていた時にぞわってきました。うまく言えないのですが、衝撃的でした。

 

 ほかにも会話に出てきた人たちや、それぞれにかかわる人が死んでいく。そこではじめて、自分たちにとって遠い存在だと思っていた死が身近に感じていく時間の流れがとても面白かったです。ほかのひとたちも、自分の言葉で誰かしら傷をつけているのに無自覚で、でもそれって自然に演技というより日常のように行われるから本当に「みている」って感覚がなくって楽しかったです。たぶん、観客はあの一室の監視カメラとかそういう場所にいるような感じでした。


 登場する人たちそれぞれが、なんだか生々しいというか、どこかにいるんだろうなあって感じが強くて、だからもやもやとか、いろんな感情が溢れてしまいました。あと、舞台で8割くらいずっと水着姿の下平が一番まともそうっていうか、見た目とは裏腹という感想。阿部と唯一の女性インストラクター・江上の会話とか、あの女性が女性に強くあたるってまあまあよく見る場面で、それもなんだか直視はしたくない感じがありました。阿部は結婚に対して強いあこがれもあるのかなあ。なんだかこういうのは小難しく考えてしまいますね。

   あと、あのあと江上はそのまま自殺したのかもしれないなあなんて思いました。きっと結婚の話も嘘なんじゃないのかなあ。

 

 この舞台の「口紅」というタイトルは、なんでそれなんだろうな~っていうのもありました。ただ赤はこの舞台では死に近い意味の色のように思えて、最初登場した前田の服装とか、その後の女性のお化粧とか、あまり良い意味ではないような気がしました。嘘も赤ですもんね。
 そもそも、前田は一体どんな女性だったのかなあって振り返って。はやくに子供を産んで、でも別居中で、中島に対するあのべたべたとした態度ってどことなく違和感を覚えてしまう。元同級生である中島に、自分を覚えている前提で近づいて彼女は何がしたかったのかな。ただの同級生として知人の関係だけじゃないような気がして、ついそんな昼ドラみたいなことを考えたのは物販の写真もありました。
 乱暴にぬぐわれた赤い口紅の写真と、じゃあ赤い口紅って誰かしていたかなあって思い出すと前田だけなのかなあ。ちょっと遠い席だったから、お化粧もうちょっとみれたらより楽しめたのかなと思いました。でも最初からポスターではきれいに口紅が塗られていたから、それを拭っただけっていう考えすぎだよって結果もあるとおもうのですが……笑


 ほかにもいろいろな点が気になる部分がある舞台で、久々に誰かとこの作品を共有して、そのあと話したいって思いました。記憶をちょっとでも共有して、あれってどう思う?って。ちょっと聞いてみたい。感想、みおわった後に検索するほどでした。
 この舞台をもう一度みたいなって思う一方で、わたしもぼんやりと忘れていたひとを思い出しました。その人は関口と似た立場だったから、こんなにも春日と関口のシーンがひっかかったり、中島と前田のさいごのやりとりがつらかったのかと思いました。
 中島に対して他人への興味が薄いって書いたけれど、それってわたしもどこかで同じ部分もあるのかもしれない。そう思うと、なんだか見ててぞわぞわするしフラッシュバックする、そんな作品でした。ほんとたのしかったです。

 

 そして隼くんがまた、赤坂レッドシアターで2月3日(金)~12日(日)までの「孤島の鬼―咲きにほふ花は炎のやうに―」にご出演するらしく、またぎりぎりになりそうですが日程があえばぜひみにいきたいなって思います。

   口紅、お疲れ様でした。

*1:この名前にひやっとしたのはわたしだけじゃないと思う

*2:以前アップされたキリン?の絵